残業規制

2024.01.22

<シリーズ>建設業はどうなるのか
「残業規制」
 
建設業界は、2024年4月から適用される「残業規制」の影響を、固唾を飲んで見守っている状態です。
各社は様々な乗り切り策を考えているでしょうが、正直なところ「始まってみなければ分からない」が本音のようです。
それも無理はありません。
各社にとっては、この規制の影響・支障が出てきて初めて「どうするか」の具体策を考えることが出来るのですから。
 
評論家やコンサルタントは、「それでは遅い、今から対処法を考えておくべきだ」と言います。
しかし、そうした理想論は建設会社の経営経験が無いか浅い人の言葉です。
もちろん、ある程度の方向性は考えておくべきですが、それ以上は先走らないほうが良いです。
なぜなら、具体策の多くは費用や手間がかかり、実務者の負担となります。
それなのに、効果が出なかったら、経営の足を引っ張るだけになります。
 
1月10日付けの「日刊建設通信新聞」の1面トップに「上限規制は暗中模索」と題する記事が載りました。
その中の以下のくだりを引用させてもらいます。
「もう時間がない。これからできることは限られている。あとは本番が始まってから走りながら考え、個別の課題に都度対応していくしかない」との声が漏れる。
(中略)
暗中模索の状態は続く。」
 
これが、多くの建設会社の本音ではないでしょうか。
さらに、同記事には「長年の懸案『請け負け』からの脱却なるか」と続きます。
しかし、この脱却は相当に難しいテーマです。
「契約は、双方が同格の立場」とする理念が根付いていない日本では、どうしても顧客側が優位となります。
また「下請け」という用語が「協力会社」となっても、元請け会社の優位的立場は変わりません。
この問題は、次の回で解説することにします。
 
残業規制の問題に戻り「その解決策は?」と問うと、判で押したように「生産性向上」という答えが返ってきます。
業界紙の記事にも、この言葉が氾濫しています。
もちろん正解ですが、全産業・全企業に当てはまる答えなので、「ごもっとも」で終わってしまう答えです。
「◯◯の“やり方”で生産性を向上させる」と続かないと、何の解決策にもなりません。
その◯◯も、現状では「多能工化」、「デジタル技術の活用・・」ぐらいしか出てきません。
たしかに、この2つは生産性向上に繋がりますが・・多くの会社は確信が持てず、費用だけが増えていく懸念を拭えないのではないでしょうか。
 
こんなことを言うと、
「では、お前は具体的な解決策を持っているのか?」と言われるでしょうね。
その答えは、「儲かる建設会社になろう」で順次解説していきますので、そちらを御覧ください。

 
参考文献:日刊建設通信新聞
 
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