残業規制と人手不足のダブルパンチをどう乗り切るのか?

2024.04.15


これまで建設産業に実施が猶予されてきた残業規制が4月1日から始まりました。
この残業規制は2019年4月1日から始まっていたのですが、中小企業に対しては1年間の猶予、建設業や運送業、医療機関などに対しては5年間の猶予が与えられました。
その猶予期間が3月で終わり、4月1日から建設業も本規制の適用を受けることになったわけです。
 
本コラムをお読みの方は、この規制の内容をよくご存知のことと思いますが、以下に簡単に残業時間の規制内容を整理します。
 

労働法    :月45時間、年間360時間
例外     :月100時間、年間720時間
              (ただし、複数月に及んだ場合は、月平均80時間)
 

自分が現場監督だった時代を考えると、正直「無理だな~」と思える内容です。
当時は月200時間の残業が当たり前、年間では2000時間を超えていました。
もちろん、こんな働き方を肯定はできませんが、このような働き方が日本の高度成長を支えたことは事実です。ただ、犠牲も大きく、事故だけでなく現代では「過労死」と言われる犠牲もかなり発生しました。
それでも当時は「働き方改革を!」と言い出す人はいないし、
マスコミも沈黙でした。
そのまま経済成長に酔った日本は減速せず、バブルへと突き進み、そのバブルが弾けて経済成長は止まりました。
 

この時が「働き方改革」の絶好の機会でしたが、政権交代した当時の民主党は、改革の意味を履き違えていました。
公共事業を悪とする世論を喚起し、建設産業を罪人のごとく扱うことで「大岡裁き」の奉行のごとく振る舞いました。
当時のマスコミも「コンクリートから人へ」のキャッチコピーに乗り、建設業界を叩きまくりました。
業界を叩くのであれば、元下関係の不条理さや現場員の負担増などを追求すべきでしたが、そのような動きは皆無で、「建設会社は吸血鬼」のごとく報道されました。
結局、そこから「失われた30年」と言われる長いデフレトンネルに入ってしまったわけで、明らかな失策でした。
 
こうした過去の反省が行われないまま今回の残業規制を迎えることに危惧を覚えます。
結局、その“しわ寄せ”は、弱い立場の下請け企業などが被ることになるのでしょうか。
 
その上、人手不足です。
それも単なる「数の不足」ではなく「使い物にならない若者の増加」の深刻さです。
 

実は、この問題、バブル時代から深刻だったのです。
この時期、私は管理職でしたが、新卒者の質が年々低下してくることに頭を悩ましていました。
ついに、人事部に対し「もう我が部に新卒者を配属してくれるな」とまで言ってしまいました。
当時、痛感したのは、子供を甘やかして育てた家庭および学校教育の間違いです。
ただ、そんなことを「今になって吠えて」も意味の無いことです。
ゆえに、企業に言いたいのは「甘やかされ、伸び代を感じない新人を雇うな」ということです。
「でも、若者が入らないと会社の将来が・・」と言われるでしょうね。
そのことを併せて考えてみましょう。
 
一番の問題は、建設業に与えられた5年間の猶予期間の間に建設工事の生産性が“それなり”に向上したかどうかという点です。
もし生産性が向上したならば、建設工事の原価は下がり、同じ受注金額でも利益が上昇したはずです。
あるいは、付加価値向上への投資が出来、より高い受注金額を得ることができているはずです。
そうした効果で企業利益は上がり、“使える”若者を採用できるはずです。
しかし、建設業団体が束になり「民間発注者にも発注価格の値上げを」と政府に陳情する有り様からは、そうした様子は伺えません。
 
さて、どうしましょうか。
次回に続けます。