請け負けは受注商売の宿命

2024.02.05

<シリーズ>建設業はどうなるのか
「請け負けは受注商売の宿命」
 
今回は、建設業界の人には常識ですが、一般社会の理解が進んでいない「請け負け」についてです。
 
建設工事は注文単位ごとに造る「一品生産」で、注文価格は注文主(顧客)と請け側(建設会社)との交渉で決まります。
当然、建設会社は顧客に対して受け身となり、「請け負け」となる要素が生まれます。
請負関係が比較的良好なのは、公共工事です。
発注する側は国や県、市町村などの行政機関であり、あらかじめ予算が決まっていて、担当者はある程度の専門知識を有しています。
つまり、請負側の建設会社と情報を共有できる部分が大きいといえます。
しかし、国⇒都道府県⇒市町村となるに従いそうした要素が減り、両者の理解にズレが生じます。
その結果として、やはり「請け負け」要素が増えていくことになります。
 
昔は、国の工事でも、コストが合わない無理な案件の受注を強制されることもありました。
現役時代の私も、発注側のまったく理不尽な要求を何度も飲まされました。
業界を知らない人からすれば、そんな要求は拒否すれば良いだろうと言われますが、報復を考えると、そんなこと出来るわけはないのは、業界の方であれば説明も不要でしょう。
 
こうした関係を補完する意味で、“かつて”は談合がありました。
世間では、談合は業界ぐるみで「不当な利益を分け合う仕組み」と言われ、非難の的になってきました。
たしかに、そうした側面があることは否めませんが、請負側の共同防衛的側面も大きかったのです。
しかし、法令で禁止されている以上、表立っての存続は難しく、消えるか地下に潜る存在になっています。
 
現在は、そうした理不尽な発注はずいぶん減ってきたようで、安定的な発注が約束されている公共事業は、ありがたい存在です。
特に土木分野においては、2022年度24兆円の市場の大半が公共事業であり、企業存続の基盤となっています。
この先も市場規模が大幅に変わることはなく、普通の経営を行えば倒産することはないはずです。
 
しかし民間市場は、同じようにはいきません。
全体的な景気に大きく左右される上、他社との“がちんこ”競争にさらされる場合が多く、受注環境は常に不安定です。
こうしたことを「仕方ない」と諦めるのではなく、打開策を考える必要があります。
 
そもそも、建設業界の内と外(他産業、一般社会)との理解の溝は深く、それが結果として「請け負け」の下地を作り出しています。
自由な発注、自由な受注が民間市場の大原則なので、多くの場合、建設会社と顧客との1対1の関係がほぼ全てとなります。
当然、発注の選択権を有する顧客側が強いのは当然で、建設会社は明確な受注戦略・戦術を持つ必要があります。
そのことを、今後、順次述べていくことにします。
 
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